暇と退屈の路上学

ビートのこころはナンパ師へと @casady879

自己紹介をします

路上でナンパを始めてから1年が経ちました。

ここまでほぼ一人でやってきましたが、最近素直に一緒にナンパをしたり共感して話せる友達が欲しいなーと思い始めて、ここで一度自己紹介の記事を書こうと思いました。

今すぐにということではないですが、これからどこかのタイミングでどなたかに合流申請を送らせて頂いたりした際、少しでも自分についての人となりを示せるものがあった方が良いだろうなと思ってのことです。



都内在住、20代後半、ナンパを始めた翌日casadyという名前でアカウントを作り、twitterでもたまにつぶやいています。

ナンパをする一番の目的は、ナンパそれ自体が楽しくして仕方ないからです。

突然に街中で出会い、会話が始まり、自分の働きかけによって相手の内面に入り込んでいき、言語化できない駆け引きの先にある儚いまどろみを追い求めて二人の空間をつくっていく。

そういう瞬間的に無我夢中になれる時の流れ方がすごく楽しくて、クラブでも合コンでもなく、基本完ソロで粛々とお声がけすることに今は一番の楽しさを感じます。

リチャード・リンクレイターのbefore sunriseなんかは自分の理想とする即の形に近いなと思ったりします。

約1年前、2015年のGWから路上でのナンパを始めて、7月ぐらいまで集中して活動、そして真夏と呼ばれる季節になる頃にはパタリと辞めていました。

ショボ腕なりに結果は出ていなくはなかったのですが、自分の中でなんだかもやもやとしたものを上手く処理することができず、逃げるようにとある趣味に没頭、半年が過ぎました。

今思えば、次々と目の前に現れる不確定要素に対して自分なりに体系立てて前進していく作業が面倒になってしまったのかなと思います。

その後も頭の片隅にはいつでもナンパがあって、やがてまたナンパしたい思いが抑えきれなくなり、年明け頃からクラブナンパを再開、4月に公家シンジさんのナンパセミナーに赴き、5月から再びひとりで路上に出てナンパを再開しました。

恐らくですが公家シンジさんのナンパセミナーによるものが大きいと思うのですが、再開してからは地蔵をすることがあまりなくなり、今はナンパが純粋にすごく楽しいです。

声かけする際は完全にアドリブで笑いとノリで動かすというスタイルでやっています。

ルーティンみたいな定型文で話すのは自分としては照れてしまう上なんだか楽しくないので、今のやり方は雑も雑だとは思いますがとても楽しくはあります。

今の楽しさのままもっと結果を出したいなという気持ちと、他のスタイルもトライしてみたいなという気持ち、半々です。

基本即狙いですが、連れ出した後はきちんとコミュニケーションを育みながらじわりじわりと内面に入り込んでいくことを意識してやっていると思います。

ナンパクラスタでは、すごいなと思う人だったり、ブログや呟きが素敵だなと思った人を勝手にフォローさせてもらっています。

昨年ナンパを始めてすぐの頃、とある凄腕の方からたまたま連絡を頂いて、一度だけ合流させてもらったことがあります。

それ以外では、ナンパをされている方と交流と呼べるほどの交流の機会は今のところありません。

ゆっくりでも良いから、色々な方にお会いしてみたいなあと最近思います。

最後に、ハンドルネームcasadyの由来は、アメリカの小説 on the road(日本版タイトル『路上』)に登場するキャラクターの名前です。
自分にとっての文字通りのヒーローで、こんな人みたいな躍動感を抱えてナンパがしたいなと思って拝借しました。

以上、冗長な文章で失礼しました。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
いつかどこかでお会いできれば、幸いです。

特に面白味のない自己紹介となってしまいましたが、もし何かしらの縁を感じてくださった方がいらっしゃれば合流申請ももちろん歓迎でございます。




1年前初めて即った女の子についての幾分長めな回想


小さなあくびをする彼女。

「眠いんなら、別に寝ても良いんだよ?」

僕は何気なしにそう言葉を投げかけた。
情事の後、あの一番安らかな気持ちに包まれた心もちで意味もなく言ってみただけの言葉で。

円山町のひと部屋。
閉じられた窓からは光が届かない。
照明だけが昼夜問わず一定の明かりを灯すセピアの空間で、僕の時計を所在無げに両手でいじり続ける彼女。

「うんう。勿体無いもん」
ふと顔を上げてそう答えた。


??

なぜだか、出会ってからまだ2時間ほどなのに、彼女の言葉は激しい力を持って僕の心に響いた。

今振り返ってみれば、それは誰がなんと言おうと、とても純度が高い言葉だったのだと思う。

端から見れば、ただのぎこちないハイエナが一匹。
そんなハイエナについてきた、そもそも狼とハイエナの区別さえうまくつかなかった一人の無防備な赤ずきん。

ところがそんな赤ずきんの言葉を無防備すぎるほどに全身で浴びた一匹のハイエナは、思わず口をわずかに開けたまま、ぼーっと彼女の瞳を見つめてしまった。

静かに膨らむ感情の渦を上手く捉えられぬまま、衝動的にもう一度強く彼女を抱いた。









去年のちょうど今頃、僕はいわゆるストリートナンパというものを始めた。

ここではその経緯については僭越ながら省略させて頂くが、それまでさまざまな男と女の出会いの現場を右往左往し、それなりの手応えはありつつけれどもゆっくりと弾き出されるようにして路上に辿り着いたというのが当時の僕の心もちだった。

行き詰まった成熟社会、時代の病理に翻弄された男がまたここに一人。

うだつの上がらない、世に吐いて捨てるほどいるジョブホッパーのような。



そんな駆け出しの病人が初めて「即」をしたのが、彼女だった。

 

大型連休半ば、暦上は平日。
一通りもまばらな昼下がりの井の頭通り。

「目力強いね〜(with 硬直した笑顔)」

今思えばむしろ一周回って新鮮ささえ感じる滑稽なお声がけ。

けれども見るからに暇を持て余しながらゆっくりと歩いていた彼女は、通り一遍の拒否反応を弱々と形式的にこなしつつも、比較的あっさりと僕の誘いに応じた。

「渋谷で一番おいしいって言われてるコーヒーショップがあってさ!!…知ってるかな?プロントっていうんだけど!」

プロント…。

初めてレイアップシュートにトライした運動音痴の小学生みたいな動きで、彼女を座席まで連れて行った。

後はもう、自分でも乗っている列車の速さに戸惑いながらも、無我夢中に状況に身を任せて終着点までを突き進んだ。

合コンで、出会い系で、今まで「ワンチャン」やろうとしてきた時のようなかんじで。

たわいもない話をして、コイバナして、個室で髪良い匂いするよねって近づいてキスして。

今まで自分がやってきたことの焼き直しをしてみたら、すぐに訪れたザ・ビギナーズラック。




こうしてナンパを始めて3日目、ナンパ師キャサディによる初めての「即」いうものが達成された。

陽が落ちる道玄坂を下りて、最後はバーで一杯ずつビールを飲んで、駅に向かう階段を降ったところでさよならをした。


楽しかったよ!ほんとまた会おうな!笑

そうLINEを送った。



LINEは、ブロックされていた。







最後に立ち寄ったバーで、彼女が以前飼っていた猫について話していたことを覚えている。

もうだいぶ昔、まだ彼女が小さかった頃、当時飼っていた猫がある日突然散歩に出かけたまま帰ってこなくなった。

雄猫、ジョン君。

普段は散歩に行ってもちゃんと帰ってくるのに、その日のそれっきり戻ることはなく失踪。

どうして急にいなくなったんだろうと家族は哀しんだが、例に漏れずそのまま人間の生活は続きそして月日が流れた。

ところが近頃、彼女の家のすぐ近くでどこか見覚えのある野良猫がウロウロしている。
あれはもしかして、かつて飼っていたジョンなんじゃないかと家族で話している。

「だってね、今でももしジョンがまだ生きてたら、あの野良猫とちょうど同じくらいの歳のはずなの。もちろん歳はとってるけど顔も似てるし、ジョンなんじゃないかなって。でも名前を呼んでもこっちには来てくれないし、ジョンなのかなあ、違うのかなあってお母さんたちとで話してるの」





彼女は

所詮世の中的には量産系。
所詮ナンパ師的にはド即系。

暇を持て余して渋谷の街をうろついていたただの学生。

なんだか、それでも僕にとっては、不思議に彼女の言葉のひとつひとつが染みいるものに思えた。

ぽつりぽつりと紡ぎ出された生活の色のある話が、どこか浮遊感のある彼女の存在に形を与えて僕の五感をゆさぶり始めた。

消えゆく記憶を手繰り寄せると、そんな感覚が脳裏に浮かぶ。





いつのまにか、互いのビールグラスはほとんど空になっていた。

「あのさ…また俺に会う気ないっしょ?笑」

淡々と話を続けていた彼女の言葉が少し空いたタイミングで、自分でも気づかぬうちにふいにぽろっとでたそんな質問。

あくまで軽やかなトーンで聞いたけれども、正直な話僕の心の中は既にあまり穏やかではなかったと思う。

「うーん…(笑)」

彼女は静かに、ごく小さくはにかんでいた。
下手くそであることを特に気にかけてもいないような、そんな罪の意識すらない下手くそなごまかし笑い。

「確かにさ、俺らはナンパで出会ったし、そんな簡単に俺のこと信じてくれって言うのは難しいことだってのはよくわかる。
でも純粋にね、本当に俺は〇〇といてすごく楽しかったし、また会っていろんな話がしたいなって思うんだよ。
それとも〇〇は、あくまでこれは今日だけの出来事、みたいに考えるつもりなの?」


あくまで落ち着いて、なんて描写が説得力を一切持たない必死以外の何物でもない情けなさのオンパレード。
そんな自分とは裏腹に、むしろ裏腹になるべくして、彼女は特に何も答えず、ただただ静かにはにかんでいた。

そりゃあもう、きっとはじめから答えは決まっていたもんなあ。










「うんう。勿体無いもん」

あの日の記憶の表紙はやっぱりあの円山町のひと部屋で。 

決して饒舌ではなかった彼女がふと口にした言葉は、静かな痛みを伴う日焼けしたフィルムの残像として、今でも時折頭の片隅にすーっと映し出される。

世の中で謳われている恋愛ものがたりが、分かり合おうとした二人、もしくは分かり合えなかった二人についてのものとに大別されるとすれば。

ただ1日だけ体を通り過ぎた二人が、分かり合おうとする必要などもなく、ただ極短期間で瞬間的に濃密な分かり合う体験をしてしまう。

そういう物語もその間にはあるということを、僕はその日図らずも体感することになった。

それは僕にとって、自分の中にどっぷりと根を下ろすある種の人生賛歌であり、また同時に日々の生活の価値判断を脅かしうる混乱の種でもあるなと未だに思う。



生のカタルシスは、一瞬の中にこそあるのでしょうか。

未熟な僕には、まだよくわかりません。

ただ確かに言えるのは、
あの日の記憶はまだしばらく僕のことを捉えて離すことはないだろうということです。

あれから、1年と少し。

ナンパは僕の生活の一部になりました。

「幸せ」は高波の如く訪れ、またふいにさざ波の如く引いて行きます。

とりあえずは、波に向かってみよう、乗れるものなら乗ろうとしてみよう、引き続きそういう心境ではあります。

海水を飲みつつ、できるだけゴーグルは外して、なんなら水着さえも脱いで、生まれたままの姿で身を委ねてみようと思っています。

沖に流されていくのか、どこかの島にたどり着くのか、はたまた浜辺に流し戻されるのか。

ぜんぜんわかりませんが、まだ海に執着がある限り、バタ足することだけは止めないようにとは思います。



あの日以来続くのは、本編か、それとも長い長いエンドロールなのか。

それは、もう暫くフィルムを回し続けてみないとわからないのです。